曹操は政治にたいしても、人いちばいの情熱をもって当った。許都を中心とする新文化はいちじるしく勃興している。自己の指導ひとつで、庶民生活の様態があらたまってきたり、産業、農事の改革から、目にみえて、一般の福利が増進されてきたりするのを見ると、
「政治こそ、人間の仕事のうちで、最高な理想を行いうる大事業だ」
 と信じて、年とるほど、政治に抱く興味と情熱はふかくなっていた。